欠損症を考える① 欠損症とは

歯を失う事を欠損と言います。歯を失う原因は様々です。失わない様に予防することが第一ですが、失ってしまったらどうすればよいのでしょうか。1本でも歯を失うと、噛む機能は低下します。機能が低下すると他の歯で代用使用し咬もうとします。そうなると正しく咬む事ができず代用して咬もうとした部位やその周辺の組織、筋肉、顎関節に無理な力がかかりダメージを負います。その連鎖反応により段々歯を喪失していきます。この事を「咬合の崩壊」と呼びます。


また欠損部分を放置していると、生体は、その部分を埋めようと働き、欠損した対合の歯は、廷出し、欠損した隣接の歯は、欠損した部分に向かって傾きます。


廷出した歯も傾いた歯も隣の歯との間は、必要以上の隙間が開き食べ物の物詰まりが始まり虫歯や歯周病、また、廷出した歯、傾いた歯が早期接触を引き起こし、咬み合わせが変わる場合もあります。


咬み合わせが変わると、食べ物の味が変わったり、肩こり、頭痛が発症したりします。


咬み合わせの状態を悪化させると、食べ物の咬む回数もへり、唾液の流出量が減少します。唾液はでんぷんを分解する酵素でもあり口腔に入ってくる異物(細菌、ウイルスなど)から最初に守る免疫作用もあり、成長ホルモンも含まれています。また、咀嚼できないと小腸での消化も悪くなります。(唾液の減少についてはドライマウス参照)


わが国は、世界でも長寿の国になり、問題になっているのは痴呆症です。痴呆症は「アルツハイマー型」と「脳血管性痴呆」に大別されます。統計学的においては、現在80歳で20本以上歯が残っている方の9割以上が自立生活ができるのに対し、10本以下でかつ入れ歯をお持ちでない方の6割以上が寝たきりになってます。また特別老人ホームに入所されている方で、認知症でない方の歯の数は9本、認知症のうち脳血管性痴呆症の方は6本、アルツハイマー型痴呆症の方は3本とアルツハイマー型痴呆症に有意に差があり、歯の数が少ないことがアルツハイマー型痴呆症のリスクファクターの一つと考えられています。


咬合の崩壊を起こさせない様にするには、まずは予防!やむなく歯が喪失した場合は、できるだけ早く代用の補綴物をいれてきちっと健康に咬めることがQOLにつながると考えます。


歯が喪失した場合には、どんな補綴物が入るでしょうか?


入れ歯、ブリッジ、インプラントなどあります。
それぞれメリット、デメリットがあります。それを知ってどれを選ぶかは患者さん次第です。


義歯


基本的にはすべての欠損症例に対して健康保険が可能です。
保険の場合はブリッジと比べ健全な歯を削ることなく、安価です。その反面、咬む力はブリッジやインプラントに比べ弱く、また、着脱しなければならず、入れ歯に慣れるまで時間がかかります。手入れは、水洗と義歯洗浄剤の使用をすすめます。



義歯(入れ歯)を知ろう

ブリッジ


失った歯の両側の隣在した歯を歯台として使い、歯台には冠を欠損部にはダミーの歯を、冠とダミーの歯を連結して橋のような形になる補綴物です。取り外しせずにすみ、違和感は少なく、歯があったころの様な感覚で食事ができます。



歯台歯は、冠をかぶせますので、健康な歯であっても冠がはいる様に余分な所は削らなければなりません。場合によっては、ブリッジを入れられない場合や健康保険が利かない場合があります。


ブリッジを知ろう

インプラント


すべて保険外診療です。
欠損した部分の骨にインプラント(チタンの人工歯根)を埋め込み、骨とインプラントを結合させます。ブリッジのように健康な歯を削る必要も無く、入れ歯のように違和感も無く、咬む力も食感も天然歯と同様な感覚で使用できます。インプラントを植える手術以外にも外科手術が必要な場合があります。また術者の技量や患者さんの生活習慣、口腔状態によりことなりますが、平均10年~15年といわれております。



欠損部を補うための補綴物を設計するときに考慮しなければならない事は、どの補綴物にもいえますが、咬合力のコントロールです。欠損した歯の咬合力を支台歯や他の歯に力を分散させるので、支台歯の骨植の状態、口腔衛生状態、他の歯の骨植の状態、歯周病の状態、歯並びの状態、歯軋り、食いしばり、全身疾患などを考慮にいれて設計します。それらの状態により、入れ歯やブリッジは支台歯の数を増やさなければならない場合があるし、また、ブリッジやインプラントが不適当な場合もあります。


インプラントを知ろう

まとめ


はじめにも記しましたが、欠損症は食事の消化不良や唾液不足を引き起こし免疫力の弱体や痴呆症や体の疾患を引き起こす引き金になります。


はじめから歯が欠損の方は(先天性の方、病気を除く)あまりいません。欠損症を引き起こす虫歯や歯周病は不規則な生活習慣により引き起こされる生活習慣病です。まずは、規則正しい生活を行うことで、虫歯や歯周病にならない事が大切です。そして定期的な歯科検診や口腔ケアを行うことで、もし虫歯や歯周病になったとしても、軽度の時に治療し、欠損症にならない事が大切です。


また運悪く、欠損にになった場合は、早めの処置をお勧めします。義歯、ブリッジ、インプラント、選択するのは、最終的に患者さん自身です。どれも、メリット、デメリットがあります。まずは、患者さん自身が知識をつけて、信頼できるかかりつけの歯医者さんを見つけて、相談してください。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

関連記事

  1. 欠損症を考える② 義歯(入れ歯)を知ろう

  2. 欠損症を考える④ インプラントを知ろう

  3. 欠損症を考える③ ブリッジを知ろう

PAGE TOP