歯周病が体におよぼす影響

歯周病は生活習慣病として位置づけられ、喫煙、ストレス、食習慣や、糖尿病、動脈硬化症などの全身疾患との関連性も言われてきています。また女性の方はホルモンとの関係で思春期や更年期には悪くなると言われています。

ゆえに、我々歯科医師の治療による口腔環境改善だけでは効果が得られないこともあることは明らかで、患者さん個人の生活習慣改善、自助努力、さらには医療連携も視野に入れなければ、歯周病治療の成功はありえないといってもいいでしょう。

歯周病が怖いのは、口腔内の炎症だけに限定せず、歯の周りに増えた何億もの細菌が炎症を起こす物質を生み出すところにあります。

これらの物質あるいは一部の細菌は、歯肉の上皮組織の断裂を引き起こし、容易に血管に進入します。その細菌が血流にのり、全身にまわって各臓器に定着すると、何らかの全身疾患が引き起こされる場合があります。

健康であれば免疫機構により問題ありませんが、何らかの疾患を持っている方や高齢者の方、細菌に対する抵抗力が弱く細菌を排除出来ない場合は、定着する場合があり、今以上の重篤な疾患になる場合もあります。

炎症性細菌は、血小板凝集機能を持っており、凝集してはがれた血小板が血流にのって血栓を引き起こし、動脈の梗塞を引き起こす場合もあります。また、歯周炎から産出された炎症性サイトカインは、動脈内膜に進入し、血管内皮細胞を傷害し動脈硬化を引き起こし、それが体の病気に関わることが明らかになっています。

病気から体を守るため、まずは歯の周りの細菌を除くこと。つまりプラークコントロールが重要になります。プラークコントロールは、お口の健康を守るとともに、体の器官をまもり、全身の健康を生み出すことにもなります。

口腔は、消化器系、呼吸系の入り口です。口の中は、自然の細菌培養器(湿度・温度・栄養)です。培養して細菌が増殖するだけならまだよいのですが、そこに炎症反応も起こります。

最近、胃潰瘍の原因と言われるピロリ菌が歯周ポケットで見つかりました。また、糖尿病と歯周病の因果関係は明らかになってきました。

その他、口腔内の細菌が直接または間接的に関与するとされている疾患は多種多様に及びます。

口腔内の細菌が関与するとされている疾患(一部)


  • 肺炎
  • 敗血症
  • 心内膜炎
  • 腎炎
  • リウマチ関節炎
  • 骨粗しょう症
  • 虚血性心疾患
  • 歯の喪失による痴呆症の誘発
  • バージャー病(閉塞性血栓血管炎)
  • 妊娠トラブル

心内膜症で亡くなられた患者さんの心内膜を培養すると、原因菌の約4割が口腔細菌であったという報告もあります。


また、糖尿病で血糖コントロールがよくないと、感染に対する抵抗力が低下し、口腔内細菌が増殖し、歯周病を憎悪させます。一方、歯周病の炎症反応で生じた様々な物質や毒素が、血管中に進入し、インスリンの機能を障害し、糖尿病を憎悪させたりもします。


歯周病は手のひらに5cm四方の潰瘍があるのと同じと言われています。これは、いかに全身に影響を与える可能性が高いか、わかると思います。


たかが、歯周病と考えず、口腔の健康は全身の健康につながることを理解しましょう。また、高齢になればなるほどプラークコントロールは難しくなります。免疫機構も低下し、重篤な疾患にもかかりやすくなり、寝たきりの状態を引き起こしたりします。


出来るだけ今からプラークコントロールの習慣をつけることが、これらの疾患の予防につながります。

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