欠損症を考える② 義歯(入れ歯)を知ろう


部分入れ歯(部分床義歯)について


入れ歯の名称



入れ歯の安定の負担様式


  1. 歯牙負担(残っている歯にバネをかけて入れ歯を維持)
  2. 粘膜負担

顎提(歯茎の土手、歯があった場所)の周囲の粘膜と床との安定で維持します。


部分床義歯 1のみ 又は 1 + 2
総義歯 2のみ

中間歯欠損時の入れ歯

最後方歯欠損(遊離端欠損)の入れ歯

遊離端欠損の義歯の問題は片方一方にしか維持(クラスプ)が無いことです。つまり、咬合したら維持が無い方の義歯が沈みこみ痛みがでます。


混合タイプの入れ歯

部分床義歯の安定のためには


面を安定させるには最低3箇所固定しなければなりません。2箇所では不安定です。



部分入れ歯も同じで、入れ歯をしっかり動かない様にするには最低3箇所以上、固定装置(クラスプなど)で固定したほうが安定。回転(ヨーイング、ピッチング、ローリング)が起こる。


ヨーイング
進行方向(前後)に対して垂直(上下)に交わる軸の軸回り運動(左右の傾き)

ピッチング
進行方向(前後)に対して垂直(左右)に交わる軸の軸回り運動(上下の傾き)

床を安定させるにはクラスプは出来るだけ床より離したほうが安定します。



クラスプにはレストという小突起を付けます。これを支台歯に形成付与したレストシート(溝)と適合させることで支台歯に咬合力を負担させたり、義歯の沈下を防止することが出来ます。



レストがあれば、レストが義歯にかかった咬合力を歯台歯に分散すると同時に、義歯が咬合力が加わることによる沈下を防止する。


レストがなければ、義歯にかかった咬合力はそのまま義歯が咬合力を受け取り義歯は沈下する。沈下することにより、粘膜は血行不良を起こし、褥瘡を引き起こし痛みの原因となる。また沈下するための粘膜の刺激にたいして歯槽骨が吸収し、義歯自体、粘膜面と不適合な義歯になり、義歯が動き始めたり食べ物が義歯と粘膜面との間に入り込みます。



症例


入れ歯が痛くて咬めないので当院にいらした患者さんの入れ歯です。


上顎の粘膜及び歯牙負担の入れ歯
ばねは3箇所ついてありますが、クラスプは線鈎でレストも対なので咬むと入れ歯は沈下し、又、床と粘膜が適合していないので入れ歯がたわみひびがはいっています。

部分床の入れ歯
入れ歯の中があいており歯牙負担の入れ歯で設計されてものと思われますがクラスプも2箇所でレストのない線鈎です。

下顎の入れ歯
クラスプは2箇所で以下所はレストがついていますがもう片方はレストがありません。

当院の作成した部分入れ歯です(保険適用内)


歯が1本残っている患者さんの症例
この1本は多少動揺していますが入れ歯の維持に貢献できると考えてレストつき線鈎を使っています。

歯が1本残っている患者さんの症例
上の症例とは違い、この1本は動揺もなくしっかりしていたので積極的に維持に貢献する目的で鋳造鈎(キャストのクラスプ)使っています。

顎連続3本欠損の症例
反対側にもクラスプを掛けたかったのですが、患者さんの希望で出来るだけ小さい義歯を希望されたので片側処理の入れ歯を作製しました。クラスプを2本背中合わせに結合させた形態で、隣接する2本の支台歯に設置するクラスプ(双子鉤)です。維持力の増強と二次固定による支台歯の負担軽減効果が目的です。背中合わせに結合させた部分がレストの役目をおいます。

下顎両側奥歯が欠損の症例
クラスプはしっかり掛かっているのですが、下顎前歯が数本かなり動揺していて近い将来抜歯が考えられたので抜歯後すぐに増歯が可能なようにバーに床をつけておきました。またこの床は動揺している前歯の固定の目的もあり、できるだけ長く前歯を持たすような作用もあります。

上顎部分床義歯
両側の欠損です。両サイドを太めのバーで繋いでいます。金属部分はすべてワンピースで作っています。

保険の入れ歯と私費(保険外)の入れ歯


保険で使われる材料は決められています。材料それに関する技術自体は日進月歩しているのに、保険では財政難を理由に30年前と同じ又はそれ以下です。


入れ歯にいたっては顕著で、床、人工歯、製作段階の手順や材料、その他、審美的な入れ歯からよく咬める入れ歯まで様々な方法がありますが、保険の入れ歯は材料から製作の方法までほぼ決まっていて選択する余地はありません。つまり、保険の入れ歯には限界があるのです。歯茎のしっかりしている方と歯茎がほとんど無い方、フラビーガムの方が同じように作れば、当然よく咬めるわけがありません。それを咬むには、特殊な技術と特殊な入れ歯が必要ですが、保険では認められていません。


入れ歯の調整


入れ歯は定期的に調整が必要です。日常、常に使用しているものは定期的に点検が必要です。義歯も同様です。


義歯の人工歯は当然磨耗します。磨耗するとその部分は咬みにくくなりますので、他の咬みやすい部分で咬もうとします。それで、顎位は狂い、次に新しく義歯を作っても、狂った顎位で作る様になりますから、新しい義歯が咬みにくかったり、顎がだるくなったりします。こうならないためにも、こまめな義歯の調整が必要になります。


義歯まとめ


咬むための義歯の説明は、ほんの一部でしかありません。


前にも記していますが、義歯は、歯科医学(解剖学、機能学)で構築された理論のかたまりと、それにそって設計・製作・調整をしなければなりません。かなり難度の高い技術を要します。歯科医師や義歯を作る歯科技工士さんの知識や技量も様々です。(義歯が得意なドクター、インプラントが得意なドクターなど)


少しは入れ歯の事を知っていただいていただければ幸いです。

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